杜(MORI)のティールーム

杜の都、仙台に事務所を構える杜協同法律事務所のスタッフたちが綴るリレーエッセイ

補助輪 (y)

 うちの娘は目下、補助輪なしの自転車練習中だ。そのうち上手になればいいなあとのんびり構えていたのだが、先日近所の同じ年の女の子が一輪車を自在に乗りこなしているのを見かけて、これはそろそろ本格的に練習しないとと思った。

 自分が補助輪なしで乗れるようになったのは5才の頃だった。3つ下の当時まだ2才だった弟が、あっという間に補助なしの自転車を乗りこなすようになり、これはまずいと幼心にも危機感を覚えて、必死に練習した記憶がある。友達のお母さんが後ろを押さえてくれていて、「絶対手を離さないでね」とお願いしたにもかかわらず、振り向くと10メートルほど離れたところでニコニコ笑ってみていた。その瞬間見事に転んだ。自分の娘だと、あんな風に転んで、顔に怪我なんかしたらどうしようなんて思うが、自分が幼かった頃は、多少危ないことでも、親が大らかに見守ってくれていたような気がする。池の周りを走っていて、「絶対落ちないよ」と思っていたのに、ちゃぽんと落ちたこともあった。池の鯉が一斉に自分を見て、一目散に逃げていったことも、頭上の水面が太陽できらきら輝いていたことも、その後母が物干し竿で池に浮かんだ私のサンダルを引っかけて取ってくれたことも鮮明に思えている。そういえば雲梯(うんてい)の棒と棒の間に頭が挟まって身動きできなくなったこともあったなあ。大した怪我もなく、大人になれて良かった。