杜(MORI)のティールーム

杜の都、仙台に事務所を構える杜協同法律事務所のスタッフたちが綴るリレーエッセイ

自転車 (K.M)

 補助輪なしで自転車に乗れるようになったのがいつだったか忘れたが、近所の同年代の子どもたちのなかの最後から2番目だった。「あんたはほんとにナマ傷が絶えなかった」という転んでばかりのニブい私を見かねて母は3軒隣のゆきちゃんのお母さんの所に連れて行った。ゆきちゃんのお母さんは教えるのが上手と評判で、いっしょに練習すればみんなすぐに乗れるようになってしまうのだ。手法がいまいち思い出せなくて残念だが、おかげさまで私もすぐ乗れるようになり、以来自転車をこよなく愛してきた。乗りこなしてからもよく転び、ナマ傷を作り、洋服をダメにし、母に叱られたが、実家は駅から微妙に離れているから、自転車は早くて楽な、いちばんいい移動手段だった。行きは大抵立ちこぎ寸前に飛ばしているので前だけを見ているが、帰りは、ちょっと寄り道したり、散策したり。疲れた身体を運んでくれるのだ。実家から駅までの川沿いの道は、冬は冷気が痛くて寿命が縮まりそうだったが、夏は気持ちよくて大好きだった。実家を離れ引っ越して約半年、連れてきた私の自転車は職場の遠い夫に譲り愛用されているので、私は乗ってない。人生で1度もこんなことはなかった。やっぱりもう1台買おうかと悩む日々が続いている。