杜(MORI)のティールーム

杜の都、仙台に事務所を構える杜協同法律事務所のスタッフたちが綴るリレーエッセイ

タイム・カプセル (陽だまりねこ)

 昔よく聴いていた曲の中に、「未来の自分宛の手紙を入れて埋めた硝子瓶を、10年後に開けてみたら・・・」というような歌詞がありました。変に子どもっぽかった私は、面白そうだやってみようと思い立って、さっそく手紙を書き、探してきた硝子瓶に入れ、いちおう防水対策をして、ちょっとわくわくしながら庭をほじくり返して瓶を埋めました。いわゆるタイム・カプセルですね。
 さて、このカプセルの開封期限は2006年。つまり今年が記念すべき「10年後」にあたります。もはや自分宛の手紙のなかみはもちろん、どんな形の瓶だったかすら定かではありませんが、10年ものあいだ2006年という期限を忘れなかったことには、我ながら感心です。
 今までの私の人生には、幾つか、これら無くして今の私は無いと言えるほど大きな影響を受けた「出会い」があります。10年前といえばそのうちの幾つかに出会ったばかり、あるいはまだ出会ってもいない時期。「出会」う前の自分を思い出せない今となっては、その時期に埋めた瓶には果たしてどんな言葉が詰まっているのか想像もつかず、カプセルを開けるのが楽しみなようであり、逆に開けないでおきたいような気分でもあります。
 封印したままもう開封しないことにしようか、それとも、また10年後の自分への新しいタイムカプセルを埋めてみようか。今はそんなことをぼんやり思い巡らせていますが、それは開封する前までに考えておくとして。
 さしあたっては、狭い庭のいったいどこをどう掘り返せば10年前の硝子瓶に対面することができるのか。それだけが問題です。