杜(MORI)のティールーム

杜の都、仙台に事務所を構える杜協同法律事務所のスタッフたちが綴るリレーエッセイ

とけないノロイ (陽だまりねこ)

 以前住んでいた、秋田の小学校でのこと。 家庭科の授業中、針と糸に苦戦する私を見たI先生が一言、
「あら~まんずテボケだごどぉ」。
 手ボケとは秋田弁で手が不器用という意味だそうですが、ボケの響きもさることながら今の今まで自分が不器用だとは夢にも思っていなかった私に、先生の言葉はぐっさり突き刺さったのでした。(ちなみに平らな所でよく転ぶ子どもだったので「足ボケ」とも言われました。)
 次に転入した仙台の小学校では、転入後2週間も過ぎていない私にN先生が一言、
「もう10年も居るような顔しとんのしゃ~」
 何か引っかかったものの、きっと仙台訛りを聞き違えたんだろうと好意的に流した私に、先生は「あ、態度がデカイってことだよ」と、失礼な言葉をわざわざ言い直して下さったのでした。
 そして先日、ふたりの先生から頂いた通知票を見てみたら、そこには「もう少し早くて正確な計算ができるように、算数をがんばりましょう」とのそっくり同じ評価が。そういえば計算も遅かったんだなぁ‥‥。
 そんな懐かしくもイタイ思い出たちに苦笑しかけて、ハタと気づいたことがひとつ。
 ‥‥あれ、変わってないじゃん。
 いい加減大人になったはずなのに、数字を見るとめまいがするし、相も変わらず態度はデカく、手足が不器用なのもそのまんま。
 もしかするとI先生とN先生の言葉には、この性質はいつまでも直らないぞ~というノロイが掛かっていたんじゃないか‥‥なんて、思い出に浸りつつもちょっぴり落ち込んだ春の休日でした。