お弁当箱
黒くて巨大なお弁当箱が食器棚で場所をとっている。
夫はだいたい、わたしが3個の目覚ましと格闘しているのを笑いながら出勤していく。
けれど震災直後は徹夜続きで仕事で、食べ物を出すお店は軒並み閉まっていたので、わたしは作ったことのないお弁当と大量のおにぎりをにぎっていた。
作ったことがないからお弁当箱だってないが、頂き物のピンクのタッパーでも、意外に喜んで持って行った。
9.11アメリカ同時多発テロのとき有名になった「最後だとわかっていたなら」という、子供を亡くした母親の詩がある。
明日は誰にも約束されていないということが、これほど身に染みる経験はなかったと思う。
あのときは必死ながら、複雑な思いで「いってきます」を聞いていた。
落ち着いてから手に入れたお弁当箱はあまり出番はないけれど、手前のほうにしまってある。
時々いろんな思いがこみあげる。
(事務局 K.M)