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杜(MORI)のティールーム

杜の都、仙台に事務所を構える杜協同法律事務所のスタッフたちが綴るリレーエッセイ

バスにて (y)

 私はよくバスを利用する。自分の運転にまったく自信がないから、バスが楽ちんだ。
 ある日、知人の入院お見舞いの帰り、バスに乗り込んだ私は車内に表示してあった運転手さんの名前にふと目をとめた。中学時代の同級生と同姓同名だったのだ。わたしは運転手さんの顔を確認したくてたまらなくなり、まわりの乗客から不審に思われることも覚悟の上で、にじにじと近寄って、どうにかこうにか運転席をのぞき込んだ。そこには、懐かしい姿が、でもとても真剣な目をした彼がハンドルをにぎっていた。やはり彼だった。私はどうしようか迷いながらも、終点間近になって乗客が私ひとりになったのを幸いに、思い切って彼に声をかけてみた。なんしろ10年以上ぶりだ、下手すると20年近いかも・・・。すると、「さっきも病院前で降りたよね。」と前方に注意を向けたままの彼がこたえた。気づかなかったが、私は往きも彼のバスに乗っていたらしい。そういえば、バスを降りる時「ありがとうございました」と優しい声がしたような・・・あれは彼の声だったのか。
 彼の器用なハンドルさばきをながめながら、中学時代の彼を思い出していた。野球少年だった彼は、いつも真っ黒でニコニコと笑っている。
 久しぶりに会えたこと、かつての同級生が爽やかで優しげな運転手さんになっていたこと、私はなんだかとてもうれしかった。
 街を歩いていて、バスが通り過ぎる。このうちのどれかは彼が運転しているのかなと思う。そのことは私の気持ちを明るくする。「この仕事が好きなんだ」とニコニコ笑った彼のバスにまた乗れることを楽しみしている。

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